0歳からの歯磨き剤?
先日東京でう蝕学研究会初のイベント「カリオロジージャパンフォーラム2026」が開催されました。
その中で、3歳未満の歯磨剤の使い方に関する講義・ディスカッションが行われました。
赤ちゃんが生まれたご家庭で最初に考える歯科的な取り組みは「歯磨きっていつからどう始めるといいんだっけ?」ということだと思います。
いやホントは生まれた初日の授乳から歯科に関わることは色々あるんですけどね。
それ言い出すと長くなる(爆)
さておき子どもに歯で悩んでほしくない。それは親としての一般的な願いだと思います。
むし歯、歯周病、歯並びなど歯の悩みは色々ありますが、今回のテーマは歯磨き粉なのでむし歯予防に関するお話。
歯周病予防に科学的な裏付けのある歯磨き粉がないことや、大人を含めた歯磨き粉の選び方、使い方は以前にまとめているので以下をご参照ください。
さて、今回はその中で特に幼い子どもたち、0歳からに焦点を当てて解説します。
まず上記のLetterでも紹介した4学会合同の推奨のおさらいですが、歯磨き剤の年齢は「歯が生えてから」と表記があり、900〜1000ppmFを米粒程度(1〜2mm程度)、就寝前を含め1日2回行うとしています。
そして表のすぐ下の文章を読むと、
「乳歯が生え始めたら、ガーゼやコットンを使ってお口のケアの練習を始める。」
とあります。
歯が生えた瞬間からすぐ歯磨剤を使うのだとしたら、ちょっと矛盾しますね。
歯磨きではなく、スキンシップから。
一般的には乳歯は下の一番前の歯から生えてきます。
下の前歯は通常、何か特殊な状況のない限りむし歯にはなりません。
主な要因は唾液に常に触れる場所であり、飲食物が停滞することが少ないことなどが考えられます。
生える時期はかなり個人差があり、通常6〜8か月頃が多いですが、遅めだと1歳近くになることもあります。
じゃあ遅めの子は1歳近くまで歯磨き的なことを何もしなくてもいいかというと、そうではありません。
上記推奨の文言とは異なるかもしれませんが、「お口のケアの練習」は歯が生えていてもいなくても始めた方が良いと僕は考えています。
たぶん学会の人たちもそう考えてるんじゃないかな…。
というのも、それまで何もしていなくて1歳近くになってから急に歯磨きを始めようとすると嫌がってしまうことがよくあるからです。
ガーゼやコットンで拭うことは食べカス等を取り除くことはある程度できても、プラークを取り除くのにはあまり効果的ではありません。
あくまでも「お口のケアの練習」ですから、最初は清潔な指で触れるだけでも、なんなら口の中を触らなくてもかまいません。
ガーゼも刺激はあるので嫌がる子もいますから。嫌がらせてしまったら本末転倒です。
寝る前にゴロンしてスキンシップする。
まずはそこから習慣づけすることを意識するほうが、歯をきれいにしなきゃ!と考えるよりもおそらくうまくいきます。
歯ブラシを使い始める時期
さて、下の前歯はむし歯になりにくいとしても、上の前歯は唾液が届きにくく乾燥し、また飲み物が通過し停滞しやすい場所ですから、むし歯になることがあります。
そうするとある程度歯ブラシでプラークを落とす歯磨きを考える必要があります。
ガーゼやコットンの話は推奨にも書いてあったけど、歯ブラシはいつからって書いてあったっけ?
推奨を見直してみましょう。
「歯ブラシに慣れてきたら、歯ブラシを用いた保護者による歯磨きを開始する。」
いや、いつの間に歯ブラシ使い始めたん(笑)
そうなんです、いつから歯ブラシを使い始めるかは書いてないんですよね。
「ガーゼやコットンに慣れてきたら」とか「お口のケアに慣れてきたら」なら分かるんだけど。でもおおよそそういう理解で良いと思います。
上の前歯を磨くときには注意点がひとつあります。
以下のイラストの上唇小帯。

こいつにブラシが当たるとめっちゃ痛い。
大人も試しにここを押さえてみると痛いのは分かると思います。
小帯には絶対当てるな。
これが超重要です。
この時期はまだ仕上げ磨きのみですので、ヘッドの小さな歯ブラシが良いでしょう。
本人も自分でやりたがるようになれば、喉を突かないデザインのものを渡してあげてくださいね。
絶対に仕上げ用の歯ブラシは渡してはいけません。
ネックが長く、口にくわえて転んだりして喉にささる悲惨な事故がかなりの頻度で起きています。
日本小児歯科学会もポスターを作って啓発しています。
歯が生える前のケアのついても触れてくれていますね。
僕も同じ考えです。
いよいよ歯磨き剤デビュー?
さて、歯ブラシを使い始めたのですから、歯磨き剤も使うか?となりますね。
推奨通りであれば、900〜1000ppmFの歯磨剤を米粒程度、です。
やっとこのレターの本題にたどり着きました(笑)
お恥ずかしながら僕も最近まで知らずにいたのですが、この”900〜1000ppmFの歯磨剤を米粒濃度”という使い方、実はそれが効果があるかどうかは研究で示されてはいないのです。
まず濃度については900ppmFより低い濃度、たとえば日本国内でもよくある500ppmFや100ppmFではむし歯予防効果は認められていません。
量についてはコクランレビューでも「エンドウ豆大」の効果しか述べられていません。
ではなぜ推奨は「米粒大」としているのかといえば、歯のフッ素症の懸念があるからです。
フッ化物の害で分かっているのは2つだけ。
急性中毒と慢性中毒です。
歯磨き剤をそのまま大量に食べてしまうようなことがあると嘔吐や下痢のような症状を引き起こします。これが急性中毒。
幼いお子さんは甘さのある歯磨き剤を好んで食べてしまうことがあるので、保管方法に注意が必要です。
そしてもうひとつの慢性中毒が「歯のフッ素症」です。
永久歯が作られている途中のお子さんがフッ化物を毎日摂取しすぎると、永久歯の形成に問題が起きることがあります。
歯のフッ素症は、子どもが「0.1mg/kg体重/日」のフッ化物を毎日摂取すると起きうる、とされています。
6歳未満に使用が推奨されている1,000ppmのフッ化物濃度の歯磨き粉で想定すると、1g中に1mgのフッ化物が含まれることになります。
体重1kgの1歳児を想定すると、エンドウ豆大(グリーンピース大)だと通常0.25g程度なので、1日4回歯みがきをする量を全量飲み込むとその量に達します。
もしも本人磨きと仕上げ磨きの両方でつければ2回で達しますし、ペーストタイプで磨いたあとにジェルタイプを塗る用い方も同様です。
いずれにせよ適切な使い方を逸脱すると起きるだけのことではありますが、その他のフッ化物の摂取機会も鑑み、低年齢の場合はより安全な米粒大(0.1g程度)で設定されています。
つまり、効果があると分かっているから決められた量というよりは、安全に用いることができる量で設定されています。
一律歯が生えたら歯磨き剤デビューでなくていい。
結局のところ、特に3歳未満の場合は歯磨き剤の使い方よりも、
まずもって食習慣の要素が一番大きいと考えて良いです。
ほかにも母乳とミルクの違いや、夜間授乳、哺乳瓶う蝕などはっきりと示されている要素もいくらかあります。
歯磨きはしたほうがもちろんいいです。
プラークのないところにむし歯はできませんから、これは議論の予知なしとしていいと考えています。
フッ化物配合歯磨剤をいつからどのように使うかは、もし一律に推奨を出すならばやはり、歯が生えたら900〜1000ppmFを米粒大で1日2回、となると思いますが、理想的には個別のリスクに応じて判断していくべきことだと僕は考えています。
う蝕リスクが高いなら早期に使い始めたほうがいいし、濃度や量も推奨を超えて使うことをすすめることもあるでしょう。
反対に、使わずとも守れるのであれば何も使わなくてもいいです。
だから結局、早いうちからかかりつけの歯医者さんを見つけてね、ということになります。
ただし0歳や1歳の子どもをしっかり見てくれる歯医者さんは、全員とは言えないのも現実。
小児歯科学会の認定医・専門医やお友達の口コミなどの情報を頼りに、よい歯医者さんを見つけてあげてくださいね。
さて、ここから先は若干推奨とは異なる、僕自身の考えを深掘りしてお伝えします。
一部分だけを受け止められるといわゆる「反フッ素」などの偏った思想にも結びつく懸念があります。
なので迷いましたが後半は有料会員の方のみに公開という形にいたしました。
結論は上記と変わりません。
さほど文章量もありませんので、興味のある方だけこっそりご覧ください…。





