「離乳食」は要らない。
ちょくちょく話題になる「離乳食」。
いろんなひとがいろんなことを発信していて、よくわからなくなる典型かもしれません。
ある意味それだけ「正解」がないということで、ひっくりかえせば「間違い」も少ないということです。
いつも通り最初に結論をお伝えするなら、
離乳食なんてもんはない。
意味わかんないかもだけどこれは本当のことで、日本でも世界を見回しても「赤ちゃん用の食事」を用意し始めたのはつい最近のこと。
日本では「ありあわせ離乳」といって、大人の食事から食べられそうなものをとりわけて与えていました。
「離乳食はもちろん幼児期の食品もなかった」
「おとなの食物を利用することになった」
「日本の伝統的な離乳法は、『ありあわせ離乳』」
そして周囲には子育てを経験している方がいることが多かったし、自分の子どもを育てる前に誰かの子育てに関わることも多かった。
だからなんとなく、こんな感じになってきたら食べることを始めるんだったかな、とか、最初はこんなものをこんな風に与えていたっけ、というように、なんとなく進めることができたのだと思います。
もちろんその頃は今よりもずっと乳児死亡率が高く、それが今でも全ての側面で当てはまる正解だというわけではありません。
ただ意外と、離乳食において「本当にやらなくちゃいけないこと」は少ないのだということ。
もっと言えば、科学的根拠に基づいて言うなら「やらんほうがいいこと」も結構あるのだということを伝えたいと思います。
「離乳食」は要らない。
この言葉にはふたつの意味があります。
まず一つ目は「離乳食」という文字が示す通りの「乳離れのための食事」ではない、ということです。
離乳食を与えるために母乳やミルクを与える頻度、量を変える必要は原則ありません。
赤ちゃんがお腹が空いているときに始めるというのも基本的に間違い。
お腹が空いてしまって機嫌が悪くなっていては食事どころではありません。
最初は栄養を摂るためではなく、食べ物とのふれあいの時間から始まります。
そしてもう一つが今回の論点。
すでに述べたように「赤ちゃんのための食事」は基本的にわざわざ用意する必要はないということです。
このことはWHOなど国際的な公的機関も述べています。
「家族が普段食べている健康的な食品」
これが基本です。
一般的な認識では、赤ちゃん用の食事を別に用意する必要があって、大人が食事をする時間とは別で誰かが食べさせるものだと、なんとなく思い込んでしまっているように思います。
本来は、基本的には赤ちゃんも大人と同じものを同じ時間に一緒に食べることが大切で、そのほうが好ましいとされています。
何を与えたらいいのか?
大人と同じものといっても、どんな形態や味付けのものでも食べられるという意味ではもちろんありません。
前述の通り、大人の食事から食べられそうなものをとりわけて与える、という意味です。
WHOは食形態については別のページで、「ピューレ状、マッシュ状、半固形の食品」という表現をしています。赤ちゃんの様子をみて徐々に色々試していくニュアンスも書かれていますね。丸ごとのブドウや生のニンジンなど窒息の危険性がある食品は避けることも書かれています。
生後8ヶ月ごろまでにはフィンガーフードが食べられるようになるという記述もありますね。
回数についても、生後6~8ヶ月までは1日2~3回、9~11ヶ月と12~24ヶ月までは1日3~4回、とあります。
1回食から始めるという概念はありません。
食形態も回数も、赤ちゃんの様子をみることが大事。
なお、食品については肉、魚、野菜、果物などは挙げられているものの、お米などの穀類については触れられていないことにも注目です。
日本では一般的におかゆから与えることとなっていると思いますが、穀類は初期に摂りたい栄養が少ないため実はWHOは推奨していません。
(このあたりを詳しく知りたい方はWHOの補完食のガイドを読んでみてくださいね。)
https://www.who.int/publications/i/item/9789240081864
おかゆはもちろん、お米から始めるべき理由を科学的根拠に基づいて説明できる人はいないと思います。
理由は、慣例的、文化的なもの。
もちろんそれを無視せよというわけではありません。
もしおかゆから始めるとしても、せめて母乳やミルクよりもカロリーが確保できるものを与えることが好ましいです。
具体的には、5倍以上の濃さにすること。
10倍がゆ、7倍がゆといった薄いおかゆは与えないほうが良いとされます。
練習のためにそれもやったほうがいいんじゃないの?という考え方も根強いですが、研究ではむしろ飛ばしてしまったほうがスムーズであることが示唆されています。
「初期は栄養を摂るためではなく食べる練習だから、栄養はなくてもいい」というのは残念ながら誤りです。
僕も「最初は栄養を摂るためではなく、食べ物とのふれあいの時間」と前述しましたが、これは「食べることを目的としない」というニュアンスで、結果として口に入って飲み込まれるものに栄養がなくてもいいかといえばそれは違います。
赤ちゃんの胃は小さいので、栄養が少ないものが入ったぶん、母乳やミルク、その他の栄養があるものが入らなくなってしまいます。
ほんのわずかの量で短期間であれば目に見えての大きなトラブルも少ないとは思いますが、わずかであってもわずかのリスクにはなりますので、わざわざ与えて良いことも特にありませんから、基本的には与えない方が良いですね。
そういう意味でも「家族が普段食べている食品」がポイントなのですね。
薄いおかゆを普段から食べている家庭は通常ないでしょうから。
ちなみに5倍がゆは上記研究のように「全がゆ」とも言い、大人が食べる一般的なおかゆの濃さです。
離乳食に決まった型のようなものはない。
初めて子育てをする方にとっては、ある程度の見本のようなものがあったほうがやりやすい。
市販の離乳食の本や離乳食講座のほとんどはそうしたニーズに応えるためのものです。
でも結局その子にとっての答えとなるとは限らず、むしろそれによって悩んでしまうことも多いと思います。
「まずは1回食から、10倍がゆをひとさじから始め...」みたいに書いてあるor教えているものは正直もう読む必要も受ける必要もないと思いますが、とりあえずその通りにやってみたとして、もし食べてくれないなど悩むようならその通りにやる必要は全くありません。
多くの場合はその子にとってまだ開始が早過ぎるか、そのやり方がその子のニーズに合っていないのです。
かえって難しく感じる方もいるかもしれませんが、本を読むより、講座を聞くより、SNSで他人のやり方を見るよりも、目の前の赤ちゃんで色々やってみるべし、です。
とはいえもう少し具体的に知りたいという方には、イギリス政府が発信している離乳食(補完食)のホームページがおすすめです。
月齢ごとのレシピ集もあり、文化的背景や手に入る食材に違いはあれど参考になると思います。
海外かぶれかよ、と思われてしまうかもしれませんが、日本国内になかなか科学的根拠に基づく良い情報が少ないという現実もあります。
海外の情報を参考にするというよりも、科学的根拠に基づいた情報を大切にしたいです。
というのもたとえばイギリスの離乳食を参考にするといっても、むこうはレトルトの離乳食が中心だからと既製品ばかりに頼ってしまうことも問題だったりするからです。
実際にイギリスの公のガイドでは、レトルトの多用に警告しています。
たまにはOKだけど、やっぱり常用は好ましくありません。
海外に限らず日本のものも味付けが濃いものもあったり、けっこう砂糖も使っていたり、そしてなにより食形態のバリエーションが乏しくなってしまいます。
日本のガイドには既製の離乳食の食形態を参考にするような話まで書かれてしまっていますが、多くの子どもにとってそれは適切ではありません。
手づかみ食べもできませんしね…。
それが結果として食行動の問題(偏食、好き嫌い等)のリスクになることが示唆されています。
最近増えてきているパウチ(スパウト型)の離乳食について言及があるところにも注目です。
そのままくわえさせて与えてしまうと食材が前歯に溜まりやすく、むし歯のリスクを高めてしまいます。哺乳瓶、ストローと同じく口腔内を陰圧にして吸い込むため、口腔機能の育ちや歯並びにとっても良くない可能性もあります。
というかですね、やはりここも頭の切り替えなんです。
大人の食事から取り分けていくなら、赤ちゃんのための食事を別に料理する必要はないのです。
だからそもそも、そういう場合には市販の離乳食も不要なのです。
大人の食事も全く手作りしていないというご家庭もあるかもしれませんが、その場合は大人の食事から一緒に見直していけるのがベストです。
赤ちゃんのために、自分たちの食生活を見直すきっかけにしてもらえたら本当に良いこと。
普段は大人の食事をおうちで作っていても、たまにお店で買ってきたり、外食をすることもあるでしょう。
そういうときに市販の離乳食を使うのは文字通り「たまに」でしょうし、そういうときにも可能な範囲で大人の食べ物から取り分けられるものを与えればバッチリです。
「赤ちゃん用の食事を別にイチから用意する」という考えからの脱却。
これが離乳期のストレスを格段に少なくするポイントだと思います。
丁寧にすることが常に大事なわけじゃない。
手を抜くなら市販のものに頼るよりも、大人からの取り分けを。
10倍がゆからだんだん濃さを上げていくような必要もないし、むしろやらないほうがいい。
おかゆから始めなきゃいけないわけじゃない。
白身魚からやらなきゃいけないわけじゃない。
すべての食品をアレルギーチェックのために一品、ひとさじから与えなきゃいけないわけじゃない(主要なアレルゲンやリスクの高い場合はそう対応すべきですが)。
1回食から回数を少しずつ増やさなきゃいけないわけじゃない。
一度始めたら中断しちゃいけないなんてルールもない。
食べなかったらいったんやめればいいんです。
基本、大人のまねっこをさせていけばいい。
だから大人も一緒に食卓を囲んで、食事を摂りましょう。
ポイントだけおさえて、離乳期というそのときしかない姿を全力で楽しんじゃったほうが幸せです。
最後に、サポーターの皆さんへこの分野の参考資料を。
いつもおまけ程度で恐縮ですが、よろしければサポートお願いいたします。





