水分補給ガイド

スポーツドリンクは日常の飲み物ではない!?熱中症対策を含む水分補給の真実
山田翔(歯科医師) 2026.06.03
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だんだんと暑くなり、この話題を発信せねばならぬ時期になってきました。
今年は6月4日のむし歯予防の日に合わせて「水分補給ガイド」というリーフレットをリリースいたします。
レターでは一足お先にご紹介!

このガイドは以下のリンク先よりダウンロードし、原則無料で自由にお使いいただけます。
https://drive.google.com/file/d/11dEbpMJ0x-HHiCgF85W5edGwyv_xfdG-/view?usp=sharing
ただし、1枚目中央の3つ折り時に背面にくる部分に医院名や団体名などを入れる改変のみ可能でその他の改変をしないこと、何かしらの利益を得る形(有償での配布、有料会員限定での配布等)はしないようにお願いします。

今回のレターではガイドには詳しく書くことの難しかった水分補給に関する科学的事実について解説します。

スポドリは日常の飲み物ではない。

まず最初に大切な事実。
スポーツドリンクは日常の飲み物ではありません。
その名の通り「スポーツ時の飲み物」です。
熱中症対策の飲み物でも、治療の飲み物でもありません。

スポーツ時と日常は何が違うのか。
まずはエネルギーの消費が異なります。
運動で消費されたエネルギーを水分と一緒に補給する。】
これがスポーツドリンクの大きな目的のひとつです。
効率よくカロリーを摂取するために、主に糖質が加えられるわけですが、
これが歯科的にはむし歯の問題に結びついてしまうわけですね。

ちなみに、糖質濃度を高くすると胃に溜まってしまい、吸収は遅くなります。

豊田裕章 熱中症・脱水症対策と経口補水液について 日本学校歯科医会会誌 2020年

豊田裕章 熱中症・脱水症対策と経口補水液について 日本学校歯科医会会誌 2020年

一般的なスポーツドリンクはこのことへの配慮から極端に糖質濃度が高くなり過ぎないようにデザインされていますので、アスリートのようなスポーツパフォーマンスが求められる場面では補食を摂るなどしてスポーツドリンク以外の栄養補給も考える必要があります。
これは病時にもある程度言えることで、なかなか食べ物が食べられない状況においてはスポーツドリンクが有用なこともありますが、そこから得られる栄養だけでは当然不足しますので、過信は禁物です。

あえて単純化して言えば、スポーツドリンクは運動時の栄養補給を考えた飲み物である、と捉えると良いと思います。

水分補給に特化したのが経口補水液

スポーツドリンクと似て非なるもの。経口補水液。
こちらは栄養補給ではなく水分補給に特化した飲み物です。
一般にスポーツドリンクよりも糖質濃度は低め、塩分濃度は高めに設定されています。
熱中症や病時など、脱水の症状がある場合にはまず経口補水液、です。

ただしこちらは病時の飲料であるため、やはり日常的に飲んではいけません
「特別用途食品」に分類されており、消費者庁が警告しています。

さらに詳しくいうと、皆さんがよく目にするポカリスエットやアクエリアスのような栄養補給目的の飲料は「アイソトニック飲料」と呼ばれており、経口補水液を含む水分補給目的の飲料は「ハイポトニック飲料」と呼ばれています。

栄養補給:アイソトニック飲料(ポカリ、アクエリ等)
水分補給:ハイポトニック飲料(経口補水液等)

と考えるとシンプルですね。

熱中症対策は?

暑くなるとこの話題を取り上げる理由はスポーツドリンクや経口補水液が「熱中症対策」としてうたわれることがあるからです。
アスリートのようにスポーツパフォーマンスが求められるわけではなくとも、大量に発汗すると水分だけでなくミネラルも失ってしまいます。
その状態で水だけを摂取してしまうと「水中毒」になってしまう。
だから同時に「塩分」も必要だ、という話ですね。
この場合はハイポトニック飲料(経口補水液等)が第一選択です。
スポーツドリンクは体液より塩分濃度が低いため、飲み過ぎて水中毒に至ったケースもありますので要注意。

脱水時は経口補水液。
 熱中症の症状があるときは経口補水液。】

はい、ここテストに出まーす(爆)


もういっこテストに出るのがこれ。

【一番の熱中症対策は暑い場所を避けること。】

当たり前じゃん!と思うかもしれませんが、スポーツドリンク等を飲んでいれば暑いところで運動しても熱中症にならないと考えてしまうことは結構あるのです。
様々なプロスポーツを見ていても分かる通り、ハイドレーションブレイクなど以前にはなかった休憩タイムが設けられるようになってきました。
適度に休憩をしながら水分補給をすることが大切です。

その際の水分補給に何を飲むべきなのか、ですが、ひとつの目安としては、

【1時間以上連続して汗をかきつづける場合以外は、水かお茶でOK】です。

それ以上は休憩を取らないとダメ、とも言えます。

なにかしらの理由でどうしても暑い環境下で継続して汗をかき続ける状態が続くのであれば、熱中症のリスクは何をしても高まりますが、飲むとするならハイポトニック飲料(経口補水液等)です。
消費者庁の警告には反してしまいますけれど。
アスリート以外、スポーツドリンクの出番は原則ありません。

塩分を含むタブレットは?

こちらも熱中症対策をうたって販売されることの多い塩分を含むタブレット。
その実際の内容ってちゃんと確認したことはあるでしょうか?
代表的な商品の栄養成分表示を見ると、1粒3.0gあたりの塩分は0.1gです。
対して炭水化物量は2.75g。

単純化すれば、3g中2.75gが糖で、0.1gが塩です。

・・・糖分タブレットじゃん。

もしこれを適切に使用するとすれば、水500mlと一緒に5粒摂取する必要があります。
糖質量は8.25g。角砂糖やスティックシュガー4個分以上です・・・。
しかもそれを別々に摂って治療や対策になるという科学的根拠はありません。

麦茶のミネラル?

熱中症対策には、麦茶もよく挙げられます。
確かに水と同様にむし歯や酸蝕の原因となることはありませんから、問題はないです。
でも水より良いことがあるかっていうと、それは微々たるものかも。

熱中症対策をいうのであればナトリウム濃度を確認する必要がありますが、以下のグラフの17、18が麦茶です。

水分やミネラル補給を目的とした清涼飲料水のテスト結果について 石川県消費生活支援センター

水分やミネラル補給を目的とした清涼飲料水のテスト結果について 石川県消費生活支援センター

まぁ、たいして入っていないからこそ日常的に飲んでも大丈夫、とも言えるわけですけどね。
おいしいし。

スポドリの何が問題なの?

最後に、なぜ歯科医師がこれほどスポーツドリンクに注意喚起するのかについて。

これはもちろんまずむし歯の原因となるからです。
特に幼い子どもにとってはそのインパクトはとても大きなもの。

むし歯の要因を調べた研究の中には

【スポーツドリンクの摂取頻度が3歳児のむし歯と最も相関していた。】

とするものもあります1)。

厚労省も、「授乳期及び離乳期を通して基本的に摂取の必要はない。」としています2)。
大人もそうですが、子どもは特に与える必要はないことをしっかり認識しておきましょう。

もうひとつ、スポーツドリンクで歯を害する現象があります。
それが「酸蝕」

むし歯は細菌が糖を代謝して出す酸で歯が溶ける現象ですが、
酸蝕は飲食物そのものの酸で歯が溶ける現象です。

一般的なスポーツドリンクのpHは3.5程度。

オレンジジュースと同じか、それよりも低いpHです。
糖質の添加で酸っぱさは緩和されているので分かりにくいですが、
歯はpH5.5程度で溶け始めますので、まぁよゆーで溶けます。

スポーツドリンクはその糖質でむし歯に、その酸で酸蝕に、
ダブルパンチで歯にダメージを与えます。

だから歯科医師はこれだけ口酸っぱく伝えるのです。酸だけに。

1)三藤聡(2006)尾道市における乳幼児のう蝕有病状況に影響を与える生活・環境要因について,口腔衛生会誌,56 (5), 688‒708
2)授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版) 厚生労働省 

さて、きれいにスベったところでここから先は有料コンテンツ。
とはいうものの専門家向けに各機関がスポーツドリンクをどのように扱っているか、
科学的根拠の紹介をしているだけですから、一般の方はここまでで十分。
いずれもスポーツドリンクは日常的に飲むのはあかんよ、と言っている内容です。

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